シリコンバレー発のバイオハッキングとは

ここのところSITをやっていると言ったが、これはsprint interval trainingの略で、HIIT(高強度インターバルトレーニング)の一種だ。これはヒト成長ホルモンの分泌に効果的で、それは成長期の子供にとっても、老化防止にとってもいいということで、息子と一緒にやっている。最大心拍数の運動と休憩を交互に繰り返すことで通常の運動の何倍もの効果があると。
このように科学的知識に基づいた運動の最適化を行うことをバイオハッキングと言う。
バイオとは生、生物学的なという意味で、ハッキングは俗にいうハッキングというよりは、エンジニアリングというような意味合いが強いそうだ。簡単に言うと、身体プログラミングと言えばいいのだろうか。
運動に限らず、食事、メンタルなどの最適化を行う。
バイオハッキングという言葉の生みの親は、シリコンバレーでシステム・エンジニアをしていたデイヴ・アスプリー氏だ。バレットプルーフ・コーヒー(日本語では完全無欠コーヒー)やバレットプルーフ・ダイエットを編み出し、日本でも『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』という題でバレットプルーフ・ダイエットについての本が出版されている。
そんなこともあり、ブームはまずカリフォルニアのシリンコンバレーで起き、その後アメリカ全土やヨーロッパなどへ拡がっていった。
シリコンバレーといえば今シリコンバレー銀行の破綻のニュースで注目されているが、アップルやグーグルなどがある場所で、ハイテク産業の中心地だ。健康とはイメージが結び付かないが、実は、シンギュラリティ(人工知能が人間の能力を超える時点)を目指す人たちの間で、不老不死をバイオテクノロジーの技術で実現させようという動きが前々からあったようだ。バイオハッキングは健康法だが、特に長寿を目指していて、その延長線には寿命を延ばすことや不老不死がある。
デイヴ・アスプリー氏自身も百八十歳まで生きることを目標にしている。
寿命を延ばすといえば、『LIFE SPAN:老いなき世界』のハーバード大学のデビッド・シンクレア博士の研究が有名だが、この分野は現在多くの人の注目を集めている。バイオハッキングでも、ただ単に長生きするだけでなく、寿命を延ばすことを目標に取り組んでいる人は多い。
寿命を延ばすこと以外に、アスリートなどが身体的な能力の向上や、ビジネスピープルが頭脳の最適化等の能力開発に使うケースもある。デイヴ・アスプリー氏自身もスーパーヒューマンという言葉を使っていて、バイオハッキングが超人になるツールであると言っている。
バイオハッキングの方法には、食事法、間欠的断食、運動、サウナやコールド・プランジ(水風呂や氷風呂)などの自然な方法から、幹細胞治療やマイクロチップの身体への埋め込み、若く健康な人からの輸血など、遺伝子工学的な方法までいろいろある。

従って、いちがいにバイオハッキングといっても、やり方によって大きな差があり、安全なものから危険なものまである。
後者の遺伝子工学的なバイオハッキングについては、現段階では何とも言えない。まだ解明されていないことも多く、素人が自分の身体を実験台にして行うことに、安全の保障はない。
ネットフリックスの『バイオハッカーズ』というドイツのテレビ・シリーズでその危険な側面が描写されたりもし、すべてが健全なイメージではない。いわゆるトランスヒューマニズムと類似したものでもある。
もっとも、デイヴ・アスプリー氏はトランスヒューマニズム的な側面はあまり推進していない。彼が推進していることの多くは前者の自然なバイオハッキング技法だ。
そこには、多くの可能性を感じている。例えば間欠的断食。日本では『空腹こそ最強のクスリ』などでブームとなった一日十六時間断食がそうだが、これなどはほとんど副作用がない。運動もそう。しかも、お金もかからない。後者の遺伝子工学的な方法はまだまだ高額なものが多いが、自然な方法はほぼ無料でできる。
そこで、前者の自然な方法のみ扱ったものが、自然派バイオハッキングだ。
ただ、日本に伝わっているものは少し遅れていると思う。例えば間欠的断食の時間というのも、はたして十六時間が適切なのかも議論が分かれていて、アメリカではより最適化した方法が注目されてきている。運動法についても、具体的に、何を、何分ぐらい、どのぐらいの頻度で行えばいいかなどが、科学的に解明されてきている。月単位で新たな論文などが発表され、バイオハッキングは日々進化し続けている。そういう意味では、情報の更新をする必要があると思う。
そこで、『自然派バイオハッキング:日本の里山で発酵させたシリコンバレー発の長寿健康法』では、最新の情報を提供している。
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