農作業は健康長寿向けの最適な運動か?

自然派バイオハッキングでは運動のひとつに農作業を勧めている。

その理由は、自然派バイオハッキングが目指しているボディ、マインド、スピリット、プラネットの4つの最適化のうちボディ、スピリット、プラネットの3つをクリアーする複合的な活動だからだ。

では、ボディだけを見た場合、農作業はどうなのか。最適な運動と言えるのか?

ブルーゾーンの百寿者たちの多くが農作業をしていて、これが彼らの日常的な運動になっている。そこから農作業は健康長寿の秘訣だと思われている。

ただ、ブルーゾーンの例は西暦2000年ぐらいの時点で100歳を超えていた人たちがモデルになっているので、少し古い。彼らの健康長寿に大きく影響を与えたと思われるのは50歳から80歳の頃のライフスタイルで、彼らの場合、それは1950年から1980年ぐらいのことだ。当時は今のように他の運動法などが知られていなかった。

今注目されているゾーン2トレーニングやHIITなどに比べて、最適と言えるのだろうか。

農作業といってもいろいろあり、何をするかによって変わってくる。鍬を使っての耕起、しゃがんだ姿勢での草むしり、立った状態での草刈り、刈り払い機を使っての草刈り、米俵担ぎ(今は30キロの米袋担ぎ)などはそれぞれ違う運動だ。農作業といっても里山で暮らす場合、田んぼや畑だけでなく、山仕事なども入ってくる。チェーンソーを使った木や枝の伐採や薪割りはまた別の運動だ。

実は前に怒られたことがある。

「農作業って上半身の筋肉はあんまり使わないですよね」と僕が言った時。当時僕は川口式の自然農という方法で非常に面積の少ない田畑を営む経験しかなかった。自然農では耕さないので鍬はほとんど使わない。少なくとも上に振り上げて下すというような動作はしない。収穫量も少ないので米袋を担いで何往復もするというような作業はない。

「そんなことないよ。米俵担いだり、収穫したキャベツや大根運んだり、上半身使うよ」と専業農家の人に言われたのだ。

確かに、通常の農家ではもっと仕事量が多い。親せきにも専業農家がいて、トマトの収穫時になるとビニールハウスの中をトマトいっぱいの収穫コンテナを持って何往復もするという。ビニールハウスといっても直径30メートルぐらいあり、何往復もするとそこそこの歩行距離になる。

まあ、ここでは家庭菜園レベルの1畝(約1アール)ぐらいの畑での作業を例に取ろう。

不耕起農法でない通常の有機農法でやっている人の場合、鍬で耕すという作業がある。これの場合、筋トレとそこそこの高強度有酸素運動になる。例えば20回連続で鍬を下ろすと息が切れてくる。必然的に休まなければならない。これを繰り返せば、心拍ゾーン4ぐらいの高強度有酸素運動と休憩を繰り返すHIITになりうる。

ただ、ゾーン2レベルの低強度有酸素運動は難しい。畑の中を歩くといっても、1畝だと100平方メートルぐらいなのでたいした距離にはならない。草むしりをする時はほとんどしゃがんでの作業なので、有酸素運動にはならない。

鍬で耕すといっても年に何回その作業をするだろうか。種まき前の春と秋ぐらいだろう。そう、農作業が通常の運動と違うのが、ある一定の運動を継続的にやるわけではないということ。週3回のジョギングでも週3回のジムでの筋トレでも、毎回同量の運動内容と運動量をこなすはずだ。ジョギングの場合、1回3キロの人は毎回3キロだと思う。ジムでの筋トレも週3回ペースなら1日の休憩日を挟んでなので、同じメニューをこなすことが多いだろう。毎日やる人は日によって鍛える筋肉を変えるだろうが。ところが農作業の場合そういうわけにはいかない。その日必要な作業は異なるし、作業頻度も、週3回というふうにきちんと分けるわけにはいかない。必要な時は毎日畑に出なければならないし、天候によっては何日間か作業ができない時もある。

僕の経験では年間を通じて一番多いのが草むしりと草刈りだ。草刈り機を使う場合は結構重いので腕力の鍛錬になるが、1畝の畑だと草刈り機を使う機会も限られてくるだろう。ほとんど鎌を使った草刈りか手を使った草むしり。

これだと最適とは言えない。そもそも僕が5年ほど前に運動を始めたのは農作業だけでは足りないと思ったからだ。足りないというか、運動の種類が偏っているからだ。足腰は結構使うが、有酸素運動と上半身の筋トレという面で僕がやってきた農作業だと足りなかった。逆に腰を使う作業は多すぎた。姿勢も偏ってくるので、以前よりも腰が痛くなった。

もちろん、それでも何もしないよりはいい。全く運動をしない人に比べれば、そうした草むしりや草刈りをすることでも充分健康にいいと言える。そして、それはあらゆるスポーツに言える。テニスだろうが、ヨガだろうが、何らかの運動をすることは何もしないよりは断然いい。

しかし、健康長寿という目的に向けて最適かどうかというと、もう少し細かく見ていく必要があり、その場合、漠然と運動をするだけでは最適かどうかはわからない。

僕は、健康長寿に向けた運動として次の4つの柱を挙げている。

1、スタビリティ(安定とバランス)トレーニング、ストレッチング、関節回し、姿勢矯正

2、筋トレ(自重トレーニング)

3、ゾーン1~2トレーニング(低強度有酸素運動)

4、ゾーン4~5トレーニング(高強度有酸素運動)HIITでもいい

1と2は怪我予防と、100歳を超えても日常的な動作が何不自由なくこなせるようになるためのトレーニングで、3と4は長寿遺伝子サーチュインや細胞の再生機能オートファジーを活性化させ、老化防止と病気予防をするためのもの。

従って、農作業にしてもテニスにしてもヨガにしても、これらのどの部分がどうカバーできているかを見るのがポイントだ。例えば先ほど言った鍬での耕起は高強度有酸素運動と上半身の筋トレになりうるというように。

ゾーン1とかゾーン5とか何のことかよくわからないという人も多いことだろう。詳しくはぜひ本を読んでもらいたい。心拍ゾーンの詳細やなぜ上に挙げた4つの柱が健康長寿に必要かなどが書いてある。

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